尾形アツシ

1960年東京生まれ。現在、奈良県宇陀市にて作陶を続けている。採掘したままの原土に近い土を使って、力強い粉引や刷毛目の器を多く作っている。器のほか壺なども精力的に制作している。

 


●10人10様“暮らしの白”展(「HERS夏号」/2021年より)

その昔、磁器の白への憧れから、白くはない陶土の表面に白土を掛け、白さを演出したといわれる「粉引き(こひき)」いう名の焼物。尾形アツシさんは、粉引き特有のあたたかみのある白に惹かれ、もう20年以上、作り続けている。

採掘したままの原土(げんど)に近い、不純物の多い土を使うのは、土が本来持つ粗粗しさを器のどこかに残したいから。 「ヒビ手白」という名の粉引きのマグや5寸皿には、土と釉薬の収縮率の違いから鮫肌のような細かい貫入(ヒビ)が入る。土と釉薬、窯焚きの火という自然の力により生まれる装飾だ。尾形さんは、それを白ではなく「無地」ととらえる。器の表面に白土の層があることで、かえってその下に潜む原土の魅力が浮かび上がる。そんな器だ。(取材・文/衣奈彩子)

 

●「お茶の時間」展(「HERS秋号」/2021年より)

ヒビ手白小湯呑、筒湯呑

「お茶の器は食後や休憩時間の相棒のようなもの。だからほっと安心できるものがいい」と語る尾形アツシさん。昔、台湾映画のワンシーンで観たある家庭の、気軽でぬくもりに溢れたお茶時間の風景をよく覚えていて、湯気に包まれた茶道具や、コトコトとお湯を注ぐ音と共存する佇まいのある器に憧れるという。

「ヒビ手白」の湯呑みは、緑茶の緑を味わい深く引き立てるグレーがかった白。片手にちょうど収まる小さめサイズもちょうどよく、毎日気軽に使えることも魅力だけれど、漆塗りの茶托を敷けば格式高く、木目の綺麗なコースターを合わせればモダンな表情を見せ、おもてなしの席にも使いまわせる。生活の中のさまざまなお茶時間を受け止める、長く愛用できる器だ。(取材・文/衣奈彩子)

 

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